ぴたぱんの備忘録

物語と人が好き。本とか映画とかドラマとかゲーム実況とか漫画とかアニメとか。触れた直後の想いを残しときます。

これまで法学部で学んだことPart2

ぴたぱんです、この度、卒業に必要な単位をそろえたので(おそらく)卒業できることになりました!めでたい!

 

1年以上放置していた前回の記事の続きを書きます。ごく短い感想程度しか書けませんが、備忘録として。

本記事では、2022年度にとった9科目28単位について書きます。

 

2022年度以前にとった10科目36単位についてのPart1の記事は↓

pitapanbibouroku.hatenablog.com

 

民法第4部(4単位)by kgyせんせ

【モチベ】

同性婚や夫婦同氏制、生殖補助医療などの議論が盛んになる中で、財産法とは異なり日本独自の発展をしてきた家族法を一市民として理解したいと思った。一切モチベのなかった財産法よりはモチベ高く学ぶことができた。

【内容】

親族編・相続編に分けて扱われ、条文解釈や判例よりは(それらも一定程度扱われたが)家族とは何か、婚姻とは何か、家族法はなぜ必要とされるか、嫡出推定制度の意義とは、相続法改正で配偶者居住権が必要とされた背景とは、といったような家族法の諸制度の意義について問い直すような講義内容であった

【学んだこと】

 講義で何度も強調されたのが嫡出推定制度の意義である。子に対して確実に父母を確保する目的の嫡出推定制度が婚姻、ひいては家族法の基礎になっているとされ、家族法における婚姻は親子関係の創設を重視していることが繰り返し述べられた。そうであるとするならば、親子関係の発生を前提としない同性婚を異性間婚と同じ形で現行法に組み込むのは困難である。

 そこから、「困難だから同性婚に法的保護を与えるのは無理だよね」となるか、「困難だから国会で議論を尽くし婚姻概念の更新や家族法の大幅改正が必要だよね」となるかは意見が分かれるものであるが、そのような現行家族法の在り方についての知識は家族制度にまつわる議論の前提として幅広く世間に共有されてもいいのではないかと思った。

 

会計学(2単位) by situせんせ

【モチベ】

簿記の勉強したことあるし数字扱うの得意やし持ち込み可やから楽単やろ~ くらい

【内容】

簿記の勉強でやるような勘定やB/S、P/L、原価計算減価償却費あたりの話もある程度あったが、「学べば経理実務で計算できるようになる」というよりは、「会社法の決算公告制度と金商法のディスクロージャー制度の相違」のような、制度や概念の意義や目的、有用性について扱われ、試験でもそれらの論述が求められた。

【学んだこと】

棚卸資産を評価する際の後入先出法と先入先出法の違いについての話が面白く印象に残って覚えているが、それ以外は(持ち込み可の試験だったこともあり)ほとんど頭に残っていない

 

ゼミ(行政学)、リサーチペイパー(各2単位)

テーマについて詳述すると万が一指導教官の目に留まった場合身バレの危険があるので曖昧に書く。

ゼミは半分が院生だったので院生や教員のレベルの高さに触れた。英語論文や教科書、文献を読んで毎週課題提出しないといけなかったのでなかなかきつかった。

リサぺは指導教官が多忙で丁寧に指導する方ではなかったので、適切な研究手法の選択、資料検索、いかにして新規性のある研究にするか、いかにして(計量分析を使わない研究で)"科学的"な研究にするか、初めて書く論文の記法、などなど悩みながらほとんど手探りで(締め切り直前一週間でヒイヒイ言いながら)書き上げた。数百ページある英語の判例を複数読む経験は初めてだったが、体裁の整った文書作成や英語も含む論文などの資料調査の方法を身に着けた(?)ことは社会に出ても役に立つはず(と信じている)

 

行政学(4単位) by medせんせ

【モチベ】

最も実務に近い講義の一つであり、内容には関心はそれなりに強かった。しかし、30~40枚のみっちりスライド×26回の情報量が多く、早口で講義自体が疲れるので講義には出ていなかった。

【内容】

公共政策論、財務行政論、行政組織論、人事行政論に分けて論じられた。ジェンダー論や電子政府のトピックの扱いが一般の行政学より大きかったのは特徴的だっただろうか。特にジェンダーについてはそれなりに主張の強い教員であった

【学んだこと】

自分が愚かなのだが、試験日程と履修の関係で情報量が膨大なこの科目の勉強に十分な時間をかけられなかった。スライドと友人のまとめノートを流し読みして単位をとったように思う。イーストンの政治システム論、捕虜(capture)理論、NPM、限定合理性、政官関係などの議論が印象には残っている。実務に近いのに十分勉強しなかったことを悔いているので春休みの間に勉強しなおすつもりだ。

 

アジア政治外交史(4単位)by hrnせんせ

【モチベ】

語り口が明快かつ現代中国政治への関心が強かったので、それなりにモチベーションは高かった。講義内容とは無関係の現代中国政治事情の雑談(中共批判)が面白かった。

【内容】

古代から近現代までの中国史を扱いつつ、特に華夷思想儒学チベット仏教・経世儒学・事大思想・マルクスレーニン主義等の思想が現実の中国政治史(領域・民族・文化・外交・政変など)にどう影響したかにスポットが当てられていたのが特徴的だったように思う。講義の30分ほどを最近の中国事情雑談で潰すのも特徴的。

【学んだこと】

無機質に政治史を押さえた高校世界史と異なり、「なぜその行動をとったのか」が思想の面から解釈され記述されたのが、高校の歴史より納得しやすく面白かった。特に華夷思想が中国だけでなく周辺民族、ベトナムや朝鮮まで影響を及ぼし「天朝」秩序を形成し、現代の領土・民族・外交にも影響を与えているというのは中国の見え方が少し変わったように思う。

 

法哲学(4単位)by tkkwせんせ

【モチベ】

思想・哲学への関心は強いので最もモチベの高かった科目の一つ。ただ、試験日程の関係で十分な勉強はできなかった。

【内容】

標準的な(前任のinue大せんせに比べると)正義論の各トピックを扱う講義であったが、法概念論を扱わないのは時間の関係か?功利主義リベラリズム・分配の正義論・所有権と自由・分配の平等・世代間の平等・家族・性・愛・差別…などなど、様々なトピックが扱われた。

【学んだこと】

標準的かつもともとある程度勉強していた分野だったので、新しく学んで強く印象に残ったことは少ないが、強いて言うなら(後述の現代政治理論と併せて)自分がリベラリズムよりリバタリアニズムに立場が近いのではないかと考え直すきっかけとなった。

モチベの割に勉強の時間をとれなかったのでこの科目も勉強しなおす必要がある。

 

現代政治理論(2単位)by kwidせんせ

【モチベ】

自分の中心関心である「政治思想」ど真ん中の講義だったので、4年間で最もモチベの高い講義の一つだったといえる。(講義に出席していたとは言ってない)

【内容】

自由民主主義、ヴェーバーとシュミット、全体主義批判(ポパーハイエクバーリンアレント)、マルクス主義フーコーハーバーマス、分配の正義論(ロールズノージック、サンデル)、民主主義(シュンペーター、ダール、熟議民主主義)、多文化主義といった思想が扱われた。

【学んだこと】

分配の正義論などは従前からある程度勉強していたので真新しいことはあまりなかったが、全体主義批判には詳しくなかったのでその議論に特に興味をひかれた。

私自身は合理主義-無神論の人間なので、シュミットの自由民主主義批判やアレント全体主義批判は宗教再興のようにみえたが、詳しくないので改めて本を読もうと思った

このあたりの政治思想の話に関心がある方は過去のこちらの記事もどうぞ

pitapanbibouroku.hatenablog.com

 

経済学基礎(4単位)by wtnb・kybせんせ

【モチベ】

数学得意やし2年生の科目やから楽単やろ~ くらい

金融やマクロ経済について理解して経済ニュースや資産形成のことが分かるようになりたいというモチベもあった

【内容】

標準的なミクロ経済・マクロ経済の初学者向け講義だったように思う。担当教員の都合でマクロよりミクロの比重が大きかったか。

需要と供給、費用と供給、市場取引と資源配分、独占、市場の失敗、ゲーム理論、消費者行動、金融、有効需要、貨幣、財政政策と金融政策 などのトピックが扱われた。

 

【学んだこと】

政府支出を増やすとGDPにどのような影響を与えるかを数式で理解できたのが印象に残っている。

実社会の理解に役立つpracticalさ、数式やグラフを用いた理論の明快さが心地よく、改めて経済学部に進まなかったことを深く後悔した。

○○官庁、多すぎ!?

卒業かかった試験期間になぜこんな記事を書いているのか。

短い記事ですませます

霞が関について語る際、「○○官庁」という用語が数多く存在します。

厄介なことに、業界用語であるため正式な定義を定めた文献やwebサイトもなく、ただ先達の見よう見真似で使われるため、いまいち定義や概念の範囲が判然としません。省庁によって使われ方が異なることも。

 

 

今回は、そんな「○○官庁」を国会会議録の用例(の他にも、Xの検索機能、コーパス少納言』、google検索エンジンなど)からなんとなく意味を推測し、個人的に整理したいと思います。(書籍を参考にしたわけではないので詳しい書籍があったら教えてください)

 

 

頻度が高い用語

制度官庁

①(省庁の分類で、事業官庁と対比して)特定の現場や事業分野をもたない官庁。

下記該当官庁の職員はよく使うらしい。

該当官庁→財務省、総務(自治)など。 

独立行政法人の文脈などでは主務官庁と対比して総務(行管)が制度官庁とされる。)

用例:「最強の官庁は、我ら富士山、ほかは並びの山と豪語する財務省と言われています。我が国の国家行政組織は、制度官庁が上であるという風潮が根強く、調整官庁は軽んじられてきた歴史があるのではないでしょうか。」第208回国会参議院内閣委員会第17号令和4年5月19日

 

②(特定の制度について言及している際に)当該制度の所管官庁

該当官庁→様々な官庁 厚労省人事院、 など

用例:「デジタル庁としては、社会保障制度や税制を所管する制度官庁とも協力して、公平公正な社会の実現に向けた取組を引き続き進めてまいります。第211回国会衆議院本会議第19号令和5年4月14日

 

事業官庁

①(省庁の分類で、制度官庁との対比で)配分された予算から特定分野の事業を実施する官庁(や自治体)。

現場をもち業界団体とのつながりが強いといわれる。

該当官庁→国交省農水省厚労省など

用例:「一方、この一括計上というのは、復興庁が仕切っているけれども、実際の事業実施は国土交通省農水省、そうした事業官庁が担当するという仕組みでございます。」第183回国会衆議院予算委員会第13号平成25年3月13日

 

②(政策官庁との対比で)政策自体の立案をすることはなく、他の主体によって決定された政策・業務を執行することが求められる行政庁。1970~90年代にこの用法がみられ、近年あまりみない用法。省庁再編前、「事業官庁から政策官庁へ」などがよく言われていたようである。現業官庁とほぼ同義か。

該当官庁→(再編前の)運輸省、郵政省、建設省

用例:「一つの分け方として、事業官庁政策官庁、こういう分け方もありますね。特に私は、最近、必ずしもそういう傾向に賛成じゃないのですけれども、政策官庁と称するものが非常にむしろ地位が高いんだみたいな雰囲気がありまして、自分でみずからの責任において事業をやっておる官庁が政策官庁に脱皮していくことがいかにも進歩であるかのように言われているということを実は慨嘆している者の一人なんであります。」第107回国会衆議院科学技術委員会第1号昭和61年10月28日

 

疑問。制度官庁/事業官庁という分類でとらえるなら、外務省は?

 

頻度が中程度の用語

政策官庁

① (事業官庁②や現業官庁と対比して)行政庁が実施する政策の内容を、当該行政庁自身で立案する行政庁。事業官庁②と同様、1970~2000年代の用法か。

該当官庁→経産省文科省防衛省など。(財務省内閣府は政策官庁には当たらないとのこと。)

用例:「自衛隊管理官庁から政策官庁への脱皮ということがあると思いますが、それをぜひ実現していただきたいと思っております。」第166回国会衆議院安全保障委員会第4号平成19年3月27日

 

現業官庁

① (政策官庁と対比して)公共事業や現業などの事業役務を負う官庁。事業官庁②とほぼ同義。事業官庁②が専ら政策官庁との対比で負のイメージを伴って使用される語であるのに対し、現業官庁の方はイメージとしてはフラットな用法も多い。

該当官庁→気象庁水産庁、(再編前の)運輸省、郵政省、建設省など。

用例:「郵政省は、郵便、貯金、保険という三事業を持っておる現業官庁でありますけれども、それと同時に、電気通信、電波放送という、新たな、非常に発展の著しいそういう分野を所管する政策官庁でございまして、その役割が極めて大きくなってきていると思います。」第140回国会衆議院逓信委員会第2号平成9年2月20日

 

調整官庁

①(政策官庁などと対比して)自身で政策を作ったり実行したりするのではなく、専ら他官庁が作った政策をまとめて調整する官庁。

該当官庁→内閣府消費者庁など。

 

規制官庁

①民間事業者の活動を規制し国民の安心・安全を実現することを目的とする官庁。民間事業者の事業を推進する経産省などと対比した語か。

該当官庁→厚労省環境省金融庁など。

用例:「推進する側に厚労省になっていただきたいと思います。単に規制官庁だという位置付けでこれを取り組んでいただくようなことはあってはならないと思います。」第211回国会参議院内閣委員会第3号令和5年3月9日

 

頻度が低い用語

その他

「執行官庁」(=会計検査院など)、「経済官庁」、「ユーザー官庁」「企画官庁」など。時間があるときに詳述してまた更新します。

 

 

 

 

 

 

 

 

チンパンジーと考えるインボイス制度

僕はチンパンジー大学生なので複雑な仕組みが分からない。

2023年10月1日からインボイス制度が始まる。

インボイス制度導入で一番打撃を受けるのは零細個人事業主らしいが、これに該当するクリエイターの方々などはその芸術分野の専門学校で学んだ方も多いだろう。勉強ばかりやってきた役人の作った複雑な仕組みを理解して煩雑な事務手続きをこなすことに苦手意識の強い方がいるのではないだろうか。零細個人事業主だと税理士に丸投げする金銭的余裕もないかもしれない。

「AIいらすとや」で生成した「インボイス制度を学ぶチンパンジー

チンパンジー法学部生としてそういった「インボイス、訳分かんないよ~」という声に強く共感し、自分が理解するため、そして一人でも多くの人に伝えるためにこの記事を書き始めました。一人でも多くの人の役に立てば。

(チンパンジーなので誤った理解をしている箇所がある可能性があります。指摘もらえれば修正します。)

フワちゃんと学ぼう!インボイス制度

youtu.be

国税庁が出している「フワちゃんと学ぼう!インボイス制度」という上記動画。
youtube上にあるインボイス関連の動画の中では丁寧な方だと思った。
しかし、僕はチンパンジーなので15分も動画を見れない。

 

以下、動画中からいくつか場面をスクショして引用します。

従来の消費税納税の仕組み

消費税の仕組み

上の図を、仮に「仕入れ元=Aさん(花束加工業者)」「事業者=B社(スーパーマーケット)」として考えてみましょう。(ここでは、従来から課税事業者であった前々年度売上1000万円超の花束加工業者を想定してください。)

AさんがB社に花束を納品した際、消費税込1100円受け取ったとします。するとAさんは消費税として100円を納税することになります。

B社が消費者に花束を販売した際、消費税込3300円受け取ったとします。このとき消費税分は300円ですが、じゃあB社はこの300円を納税しなければならないのかというとそうではありません。Aさんから花束を仕入れたときに100円分消費税を払っているのですから、B社が納税するのは300-100=200で200円になります。この引き算をすることを「仕入税額控除」といいます。

キーワード:仕入税額控除
免税事業者なら…?

上記のような消費税納税の仕組みである訳ですが、前々年度の売上が1000万円以下の事業者は「免税事業者」に該当し、消費税を納税しなくていいことになります。

仮に、Cさん(零細花束加工業者、免税事業者)が先ほどのAさんの例と同様の取引をB社としたとします。この場合、Aさんが納税した100円を免税事業者Cさんは納税しなくていいことになります。もちろんCさんも農家から花を仕入れているので1100円が丸々懐に入るわけではないですが、この取引単体でみるとAさんと比較してCさんは消費税100円分出費が減ることになります。

 

なんでインボイス制度を導入することになったの?

複数税率に対応し、適正に納税してもらうため

2019年10月から、日本の消費税は10%と8%の複数税率があります。

酒類、外食を除く一般飲食料品や新聞が軽減税率の対象となり8%、その他が10%です。

このため、税額ごとに分けて計算する必要が出て、適用税率の記載が義務となるインボイス(適格請求書)を請求書として使うことになりました。

インボイスの記載事項

じゃあ、2019年10月~2023年9月はどうしていたのか?

経過措置として、「区分記載請求書」が利用されていました。ただし、この区分記載請求書の発行は義務ではなく、納税額が適正に計算されている保証はない状態でした。

出典:https://www.freee.co.jp/kb/kb-invoice/category_invoice/#content2-1

インボイス制度導入後、どう変わるの?

仕入税額控除の適用にインボイスの保存等が必要になる。

インボイスの交付は登録事業者しか行えず、免税事業者は登録事業者になれない。

③登録事業者は、買い手から求められたとき、インボイスの交付義務がある。

先ほどの花束仕入の例を用いて説明します。

買い手側であるスーパーマーケットB社は、インボイス制度導入後、仕入税額控除を受けるためにはインボイスが必要になります。

仕入税額控除をしなければ、200円ではなく300円納税しなければならなくなるので、B社は損してしまいます。そこで、B社は仕入先にインボイスの交付を求めるでしょう。

課税事業者Aさんは、登録事業者になればそのままインボイスの交付を行えます。

ところが、免税事業者Cさんは免税事業者のままだと登録事業者になることができず、インボイスの交付を行えません。

このような状況の場合、Cさんが免税事業者のままだとB社はCさんとの取引をやめてしまったり、損失を補填しようとCさんとの取引価格を安く変更しようとする可能性があります。(このような対応は、場合によっては独禁法上の優越的地位の濫用に当たり違法となる可能性があるみたいですが、僕はチンパンジーで下請法や独禁法フリーランス法に詳しくないのでわかりません)

(上記のような優越的地位の濫用とフリーランス保護に関して知りたい人は、東京大学の白石教授のオープンキャンパス講義動画をご覧ください。)

youtu.be

何が批判されてるの?

小規模個人事業主が経済的打撃を受ける懸念

先ほど書いたように、インボイス制度が始まると買い手は免税事業者と取引しないようになるかもしれません。

小規模個人事業主にとって、免税事業者のままでいれば取引相手を失うおそれがある。そうなってしまえば経済的大打撃を受けます。(再度述べますが、独禁法フリーランス法等で保護される可能性もあります。)

それを避けようと課税事業者になれば、消費税分10%を納税しなければならなくなります。
個人事業主の年間売り上げが1000万以下だと、従来免除されていた10%を納税することは経済的負担が大きいです。

つまり、小規模個人事業主にとって、免税事業者のままでいるにしろ、課税事業者になるにしろ、インボイス制度導入前より経済的打撃を受ける可能性があります。

事務作業負担の増大

これは小規模個人事業主に限らずほとんどの事業者にかかわる問題です。
・売り手(先ほどの例だと花束加工業者Aさん)にとっては、登録事業者になる事務作業負担、取引でのインボイス交付の事務負担が増えることになります。

・買い手(先ほどの例だとスーパーマーケットB社)にとっては、(仕入税額控除をしようとするなら)仕入先にインボイス交付を求め、保存し、納税額を算出し仕入税額控除を受けるという事務作業負担が増えます。

 

(e-Tax等でオンラインで簡便化できる事務手続きもあるから調べてみてね!)

 

よりよい政策手段はなかったのか?

私個人としては、政策目的「複数税率の中で適正に納税してもらう」に異論はありません。しかし、その目的を達成するための手段としてよりよい手段はなかったのか?

 

そもそも複数税率なんて始めたからこうなったのでは?増税しないで一律8%、増税して一律10%、どちらかしか選択肢はなかったのでは?過ぎたことを言っても仕方ない。

 

A「事務作業を増大させずに適正に徴税する」、決済の電子化・情報化を進めれば可能なのではないか、ネットではエストニアではそれができているとか聞くが裏は取ってない。まあただ紐づけるだけのマイナンバーごときでこれだけゴタついて揉めている日本では夢のまた夢かもしれない。

 

B「小規模個人事業主に経済的打撃を与えずに適正に徴税する」、できないのか?チンパンジーなのでいい策がパッとは思いつかないが。ここまで読んでくれた賢い読者の方は思いついていたり知っていたりするかもしれない。チンパンジー筆者まで教えてください。

 

令和5年度改正で、Aの点については「少額特例」「少額な返還インボイスの交付義務免除」、Bの点については「2割特例」での負担軽減措置がとられるという改正がなされました。詳しくは国税庁のサイトを参照されてください。

www.nta.go.jp

浣腸訪問戦略を立てる(自分用)

お久しぶりです。ぴたぱんです。

 

来週が浣腸訪問本番。こんな記事を書いている場合ではないですが、頭の中をまとめたくなったので走り書き。今日こそは短く済ませます(多分)

普段なら知的で整った文章を書こうと(少しは)努力するのですが今回は殴り書きでご容赦を。常体と敬体が混在していたりする滅茶苦茶な文章です。

 

何がみられているのか

この世の大概の就活はそうですが、浣腸訪問はブラックボックスです。
しかし、浣腸訪問を乗り越えた先輩方からお話を聞く機会は多くあるので、何がみられているのか、いろいろな人の意見をまとめてみます

①有名な現役行政官の方の意見

kasumigasekipeople.hatenablog.com

kasumigasekipeople.hatenablog.com

厚労省で面接官をされていた元行政官の方の意見

note.com

 

以下は、私が個人的に見聞きした話になります

③とある若手行政官の方の意見(Xさん)

・採用基準はわからないが待合室等で話した感じ当意即妙に返せる人が内定していた

・採用時に席次をみられていたかは知らないが、同期が「試験の席次がよかったから」と激務部署に一年目で配属されていた

・「〇〇県出身の大学で〇〇を専攻していた〇〇に関心がある人」というキャラ付けを意識していた。入省してからも、採用にかかわった人から「あ、〇〇の人!」とそのキャラで覚えてもらっていたので有効だったのではないか

 

④内定者の方からきいた、過去のA省採用担当補佐がいっていた基準

1. 一緒に仕事をしたいと思えるか(人柄)

2. その人に伸びしろを感じられるか、採用して数年後活躍していそうか

3. 国家総合職としての志(「国民のために何ができるか」等)をもっているか

4. 同期の中でのバリエーションが保てるようにしている(属性や専攻等?)

 

⑤とある若手行政官の方の意見(Yさん)

・熱意(説明会やインターンに熱心に参加しているか)を重視している省庁もあれば、説明会などに全然参加していないぽっと出でもキャラ採用のようにして多く採用している省庁もある。体感だと、B省は熱意を重視しての採用が8割の一方、C省はキャラ採用のような形が6割。(B省は説明会に多く参加していた人が内定していたが、C省はぽっと出の人が多く採用されていた、という意味)

 

⑥A省の採用担当(係員)の方の公式の説明

・席次は一切見ていない。

・大きく分けると、能力・関心・人柄・熱意の4つ。

・細かく分けると、理解力、課題設定力、論理的思考力、表現力、視野の広さ、主体性、人柄、熱意

 

 

●私の個人的な理解

〇大前提:省庁による!(それはそう)

人事課(秘書課)面接の比重が大きい省庁もあれば、原課面接の比重が大きい省庁もあるとききます。

 

〇共通していえるのは、「政策の知識の多寡が問われているわけではない」とはどこの省庁の方からもきく。(ただし、関心や志望度の高さを示すため、原課での議論のしやすさのために政策への知識はある程度あった方がいいとも)

 

〇「『自分』を伝え、売り込めるか」

雑にまとめてしまいましたが、説得的な志望動機を語れるか、自分の人柄(素でなくても呈示でもよいが)とのカルチャーフィットを示せるか、一緒に働きたいと思ってもらえる(好かれる、組織に合うと思ってもらえる)か 熱意を示せるか ガクチカ、強み等の自己アピールがうまくできるか マナーや清潔感など印象がいいか などいわゆる「就活の面接が得意か」をまとめた概念です

 

〇志望度・熱意の高さ

個人的には「熱意のある人の方が仕事ができる、出世する、組織に必要」のような考えには全く賛同できないのですが(そういう考えの方もいるとは思いますが)、「熱意」という言葉は浣腸就活ではなぜかよく耳にします。

妥当そうな理由としては、「志望度の低い人に内定を出して内定辞退されると困るので志望度が高い方がいい」「志望度の低い人に内定を出して早々に転職されては困る」というのはあると思います。特に浣腸は内定を出すのが一番遅いので内定辞退は何があっても避けたいはずです。説明会の参加回数が数えられていたり職員訪問の回数が数えられていたりなんて噂も聞きます。

一日目(第一志望)からほとんど採用を決める浣腸があるなんて話は有名ですね。E省の採用担当は、「うちは3日目の訪問はやりません(つまり1日目に来てください)」と公言していたりします。

F省では官庁訪問前に説明会やインターンでの参加度合い・熱心さ等からほぼ内定を出す人が決まっているなんて噂も聞きます。初日から一軍部屋二軍部屋に分かれていたりするとかなんとか。真偽は不明です。

 

〇「仕事できそう」か

「仕事できる」の定義も難しいですし、実際に仕事をしたわけでもなく原課で話聞いて質問・議論するだけで何がわかるんだって感じですが。

説明を受けた政策内容から課題を発見する力、説明を受けて理解する力、演繹的に推論する力(私が「論理的思考」という言葉が嫌いなだけで似たようなニュアンスです)、考えたことを簡潔明瞭に表現し伝える力、などでしょうか。

シグナリング的な意味合いで出身大学・大学院(私が「学歴」という言葉が嫌いなだけで(以下略))や職歴、試験の席次、持っている資格、他に持っている内定等をみられることも省庁によってはあるのかもしれませんがそこは人事のみぞ知るといった感じです。

春試験組よりも教養区分合格者を優先的にとっている省庁がいくつかあるという話はききます。実際に内定者の数をみるとそうだったりするのですが、優秀そうな人をとったらたまたまそうなったのか。因果関係の方向はどちら向きなのか。人事のみそしる。

「学歴」のシグナリング理論みたいなのがあるのかどうなのか。個人的には出身大学・大学院は後述の「多様性」の方に関わってくる気がします。

そして、「年齢」もここに含まれ得ると思います。「26を超えての採用はしない」と公言している採用担当がいたなんてツイートも見ました。病気で長く休学していて周りより年齢が高い状態で浣腸訪問に挑む自分にとっては悲しい現実です。

 

〇多様性

これをみているかは結構省庁によりそうです。

内閣府人事院は女性の3割採用を目指しているので女性は優先的に採用されたりするかもしれません。人事の意向により地方大出身の方の数をある程度確保しようとしていたりするかもしれません。

学部や試験区分の多様性を確保することで様々な専門性をもった人材を欲しいと思うかもしれません。

入省してからの配属が偏ると困るので、ある程度関心分野・就きたい分野がばらけるようにしたいと思うかもしれません。(関心のある業務分野で内定もらえるかどうかが決まったら溜まったもんじゃないですが、嘘でも倍率低そうな業務分野に関心あるふりした方がよかったりするんでしょうか)(私自身、E省の採用担当に「ぴたぱんさんは××に関心があるけど、業務として大きいのにここに関心がある志望者の人少ないから非常にいいと思います」と言われたことがあるので一考慮要素だったりする可能性はあります)

 

〇過去の官庁訪問経験

私は今回が初めてなので詳しくないですが、「過去に落ちた官庁で今年度訪問して採用してもらえることは少ない」といった噂はききます。過去の評価データが残っているわけですから、それを覆すのはなかなか難しいのかもしれません。先述の「年齢」要素ともかかわるのかもしれません。

 

ざっくりこの辺でしょうか。あくまで個人的な推測なので、読者の方も情報があれば教えてください。

 

どんな準備をすればいいか

時間がなくなってきたので簡潔に書きます。

〇自己アピール、秘書課面接対策、面接で話す内容を詰める

→想定問答作成、友人や大学の就職支援センター等でのESの添削や面接練習、民間企業就活で面接の場数をこなす

 

〇政策研究、関心分野の課題と対案を考える

→ぶっつけ本番で原課に挑むより、事前に調べて考えていた方がいい成果が出るのではないでしょうか。ただ、事前に思っていたほど政策の話をする機会がなかったという体験談も聞きますし、特に政策研究はやるとキリがないので適度に。

 

〇過去の説明会の振り返り

内容を思い出す、調べる、きいてみたい疑問点をピックしていく。、等々。

 

〇志望省庁に関する最近の時事トピックの把握

話のタネに。結構これやってる話聞くけど実際どのくらい有効なのかは謎。

 

〇情報収集

情報戦の側面もあるので、大学のコミュニティやインターネットの情報から浣腸訪問体験記などの情報を積極的に収集して傾向と対策を考える。

 

 

私個人の話

〇有利な点

・訪問する省庁の説明会には20回以上参加している 志望度は伝わっているはず

・政策研究は人並み以上にしている

・訪問する省庁の採用担当には事前に結構接触していて関心分野や志望動機等もある程度把握されているはず

・教養区分で合格している。運よく席次もいい。

・理解力は人並みくらいにはあるはず。

 

 

〇不利な点

・年齢が高い→シグナリング理論的に言えば生産性が低い、異常な人であると推定をかけられる可能性がある

・持病→休職リスクがあると思われる

インターンに参加していない

・第二志望は職員訪問結構できたが第一志望は全然職員訪問できなかった

・民間就活の経験が少ない

・NNT

・自己アピールが下手。

・志望動機等に結構嘘が多い

・初めて聞いた話から課題発見するの難しいンゴねぇ

 

〇今から1週間でやるべきこと

・もっと面接の想定問答の作成など話す内容を詰める。

・関心分野の課題と対策を考える。

・髪切りに行く。スーツをクリーニングに出す。

・ニュース等の情報収集。

・生活習慣をなおす。

 

後半にかけてどんどん雑になってしまいました。あと一週間。頑張ろう。

 

 

 

 

 

イデオロギーを整理しよう

 

イデオロギーの概観

日本においては政党や政策、立候補者についてイデオロギーを意識して投票している有権者ははさほど多くないのかもしれません。世論調査をみてみると政権担当能力や景気回復ができる政党かどうかが重視されていて、憲法問題や家族制度等イデオロギーにまつわる論点は二の次三の次のようです。

現代はもはやイデオロギー対立の時代ではないとはよく言われますが、それでも個々の主張をみていると、(伝統的な保革対立とは形を変えているものの)、イデオロギーや党派性に依拠した主張をしている人は多くいます。
私としては、現代においてもイデオロギーに位置付けて個人の主張を理解することは有用であると考えています。

 

以下、現代政治理論の講義で示されたスライドから引用します(講義内でも出典が示されずスライドに画像が貼られたので出典がわかりません)

図1:三次元的に捉えた図

図2:政治-経済の2軸で捉えた図

図3:政治-文化の2軸で捉えた図

一般によく知られるポリティカルコンパスは政治-経済の2軸で示されることが多いですが、文化的統制の軸を足したり、「既成政治志向-ポピュリズム志向」という軸を足したりなどして分析されることもあるようです。

政治家個人や日銀幹部などについては「タカ派/ハト派=強硬派/穏健派」という軸もよく用いられます。

最近だと、「積極財政/緊縮財政」なんて軸を足している人もみますが、経済的統制を強くするか弱くするかと対応するのではないかと個人的には考えています

図4:ポピュリズム-政治の2軸 (出典:水島治郎(2018)「二〇一七年のヨーロッパを振り返って」佐々木毅(編)『民主政とポピュリズム筑摩書房

以下、政治-経済の2軸での分類について不慣れな方向けに簡単に説明します。(慣れている方は飛ばしてください)

政治的統制が強い、というのがいわゆる「政治的保守」「右」

政治的統制が弱い、というのがいわゆる「政治的リベラル」「左」

経済的統制が強い、というのがいわゆる「経済的左派」「大きな政府

経済的統制が弱い、というのがいわゆる「経済的右派」「小さな政府」

に対応するものです。


①「政治的統制強-経済的統制弱」(伝統保守)(図2の右上象限)

政治的には伝統・全体を重視し、経済的には小さな政府を志向するもの。

政治的には全体のために個人の権利を制限することが比較的多いが、経済的には国家の介入を減らし市場原理に任せる、という立場です。いわゆる「現実主義」の人が多いか。

レーガンやブッシュ(子)などアメリカの共和党保守層などがあてはまるか。

(日本の話をすると、日本の政党は国内で相対的に「経済的統制が弱い」にあてはまる政党・派閥も国際的にみたら経済的に真ん中か少し左寄りまであることが多いらしいのでよくわかりません)

政策や主張としては、「伝統的宗教や伝統的家族の維持」「反移民」「規制緩和格差是正より経済成長」を目指すことが多いです。

 

②「政治的統制弱-経済的統制弱」(リバタリアニズム)(図2の右下象限)

政治的には改革・個人を重視し、経済的には小さな政府を志向するもの。

政治的にも経済的にも一貫して個人に政府・国家が介入するのを嫌うもの。経済的にはネオリベと言われることもあります。

2016年アメリカ大統領選で第三党になったリバタリアン党などがあてはまります。

日本のネットで若者から支持のある堀江貴文や成田悠輔はこの立ち位置ではないかと言われることが多いようです。
多くの国の右派左派政党が①や③に近くなることが多いので、この立場の人は既存政党のほとんどに批判的になることが多いです。

政策や主張としては「規制緩和、民営化」「格差是正より経済成長」「同性婚などへの国家からの規制も認めない」となることが多いです。

 

③「政治的統制弱-経済的統制強」(リベラリズム社会民主主義)(図2の左下象限)

政治的には改革・個人を重視し、経済的には大きな政府を志向するもの。

個人の権利や弱者保護を掲げ、政治的には伝統からの改革を目指しつつ、経済的には再分配により弱者に対する社会保障を手厚くしようとする立場。いわゆる「理想主義」の人が多いか。

オバマに代表されるようなアメリカの民主党やヨーロッパに多い社会民主主義政党が当てはまります。(日本の立憲民主党社民党は減税って言ったりするのでよくわかりません)

政策や主張としては「性的少数者の権利を認める」「経済成長より格差是正」「高福祉高負担」「移民受け入れ」となることが多いです。

 

④「政治的統制強-経済的統制強」(社会主義)(図2の左上象限)

政治的には全体・伝統を重視し、経済的にも国家の介入を強く行なっていく立場です。いわゆる「プロレタリアート独裁」と言われるような、ソ連などをイメージしてもらえるといいかと。労働者政党や社会主義政党共産主義政党が多く当てはまるでしょうか。

格差を生む資本主義経済を批判し、国家が経済に強く介入することで格差是正と平等を実現しようとするものです。

 

池本大輔教授などによれば、①(伝統保守)には自営業者などのプチブルジョワジーが、②(リバタリアン)には大企業経営者など経済・金融エリートが、③(リベラリズム)には大学教員や福祉・教育に携わる公務員などの文化的エリートが、④(社会主義)には労働者階級がそれぞれ当てはまることが多いと整理しています。(さらに、右派ポピュリズム政党の支持者の多くは上記自営業者層であるともしています)

本記事の読者の方はどの領域にあてはまるでしょうか。

 

(補論)ポピュリズム

2016〜18年ごろ、アメリカ大統領選でトランプが当選し、イギリスでEUからの離脱(ブレグジット)が国民投票で決まり、「ポピュリズムの台頭」ということがさかんに言われていました。アメリカイギリスのみならず、フランスやイタリア、ドイツや日本でも「ポピュリズム勢力の台頭」という話が言われていました。

この「ポピュリズム」はさまざまな定義がありますが、「反エリート」「反移民」「反グローバリズム」あたりに特徴づけられます。

大衆迎合主義」とも訳されるポピュリズムは、大衆に向けてセンセーショナルな「移民排斥」「バラマキ/減税」などのキャッチコピーを掲げ、従来のエリート政治からの離脱を目指し大衆の支持を獲得する政党や政治家を指して使われます。

昨今は政治家がインターネットで過激な発信をしてプレビューを稼ぎ知名度をあげたり、メディアで盛んに対抗相手をこきおろすような選挙番組がなされたりするのもポピュリズムの後押しになったと言われます。

日本でも、希望の党や維新の会が「右派ポピュリズム政党である」との指摘を当時されていました。

2020年アメリカ大統領選でトランプが落選したあたりからはあまり聞かなくなりましたが、揺り戻しがきたのでしょうか。それとも、インターネットの進展などを背景として今後もポピュリズムの台頭は続くのでしょうか。ポピュリズムは本当に「望ましくないこと」なのでしょうか。今後も注目していきたいです。

 

現代日本の左右対立

自民党立憲民主党が①や③に綺麗に当てはまらないため、上記の分類で考えるのは難しいですが、日本でいう右派/左派は基本的に政治的な保守/リベラルに対応します。(経済的には自民党含め多くの政党が分配を多くする傾向にあります)(議論を単純化するため、ここでは経済的な議論には踏み込みません)

○右派

ナショナリズムや軍事的・経済的なリアリズムに特徴づけられる。

「伝統的家族の維持」「天皇制維持(男系維持)」「中韓への強硬姿勢」「軍事的な抑止・対処能力の保有」「原発再稼働」「外国人への生活保護反対」などが多いか。

産経新聞や読売新聞の論調が近い。

 

○左派

リベラリズムフェミニズムなど個人の権利保護、理想主義に特徴づけられる。

性的少数者の保護」「選択的夫婦別姓の導入」「原発廃止」「天皇制廃止」「9条改憲反対」「死刑制度廃止」「外国人の権利保護」などが多いか。

朝日新聞毎日新聞の論調が近い。

 

しかしながら上記の分類は伝統的なもので、現代の60代以上には典型的にあてはまる人も多いですが、我々のような若者世代だとなかなか典型的に当てはまる人は多くない気がしています。

右派を自認しながらも、家族制度については昨今の潮流から同性婚を認めた方がいいとする若者や、左派を自認しながらも昨今の軍事的緊張の高まりから軍事的な抑止・対処能力の保持に積極的な若者が最近増えているようです。

以下は、日本政治の講義のスライドからの引用です。

図5:有権者保革イデオロギー分布の推移

図6:自民党民主党政権担当能力を認める割合の推移

図7:若年層のイデオロギー推定値の推移

図5からは中道が多かったのが分極化が進んでいる様子が、図6では民主党政権が倒れた後日本の野党第一党政権担当能力が認められなくなった様子が、図7からはいわゆる「若年層の右傾化」が読み取れます。

先ほども述べた通り、「若年層が右傾化している」というよりは、「従来の左右パッケージに当てはまらない若年層が増えている」と言った方がいいのではと個人的には思っています。

インターネットの左右対立

エコーチェンバー的に自分に近い主張ばかりが流れてくるインターネット言論空間ではイデオロギー的な分極化が進んでいるとよく言われます。

議論が下手で知的にどうしようもないような左派・フェミニストを叩いて気持ち良くなっている「保守」、前時代的でどうしようもないような保守を懸命に叩く「リベラル」、どちらも相手の立場の下の人たちばかり見て叩いて、仲間もそれを叩いているのをみて、仲間のコメントやツイートにいいねが多いのをみて、自分の正当性を確認して安心する、というようなことばかりやっているような気が個人的にはします。

政治言論を頭の体操と自己陶酔のための娯楽と考えるならばそれでいい気もしますが。

 

 

私個人の思想の整理

18歳ごろまでの親元にいたころは左派の両親の影響が強く、いわゆるリベラルであったといえます。

上京して一人暮らしを始めた18〜20歳ごろはニヒリズムに傾倒して、右派左派問わず信仰全般に対しての反発が強くなりました。

現在では、それらの影響を残しながらも、中道寄りのリバタリアン、が一言で言うと近いでしょうか。

 

自分の思想の軸を簡潔に表すならば、「自由主義」「反信仰」「合理主義」あたりです。

ポストモダン言論であるような近代合理主義批判と同様の批判が向けられることは承知しています。しかし、市民レベルでの伝統文化や宗教による紐帯の役割は認めながらも、集団が細分化多元化している現代において国の法や制度は非合理な伝統や信仰を排して設計されていなければ納得できない質です。

 

ここでいう「信仰」とは儒教神道のようないわゆる「宗教」はもちろん、「死んだら人は丁重に埋葬されるべき」のような宗教観、自然権思想のような合理性から基礎付けにくい前提や公理、「この人の言うことに従えば成功できる」のような盲目的な帰依や「この人の言うことだから正しい」というような権威主義など、かなり広くを指している概念です。

 

「反信仰」といってもそれら信仰を否定するものではなく、それら信仰が国家の法や制度に組み込まれることに反対しているだけです。自由主義の帰結として信仰の自由はもちろん重要だと考えています。

 

「反信仰」については当ブログの過去記事に詳しいです(当時身内から評判が良かった記事)

pitapanbibouroku.hatenablog.com

 

この「反信仰」の帰結として、(現実的でない・コンセンサスを得られないことは承知しながらも)

・日本家族法は全て解体して相続も財産分与も親権も個人間の契約でやった方がいい

・皇室を公金で支えるのをやめて法人化などした方がいい

死体遺棄罪など宗教感情を保護法益とする刑法は保護法益を変更したり、死体隠匿罪などに改正した方がいい

少数民族の伝統文化保護などを公金で行うのをやめた方がいい

日本国憲法の人権は天賦人権論による不可侵のものとするのをやめて、キリスト教的な自然権からではなく契約や合理性から基礎付けるべきである

など極端なことを思っていたりします。(大声で主張するとヤバい人だと思われるのであまり表立っては言いませんが)

 

最近では、自分はリベラルかリバタリアンかというとリバタリアンの方に近いのではと思うことも多いです。経済的弱者への社会保障が必要だと思うのと同時に、高所得者が給料の大部分を税金でとられることを嘆く気持ちもわかる。高い累進課税が原因で国際競争力を高める人材や企業が海外に流出しては日本は先細りするばかりじゃないか、パイを拡大しないと社会保障の財源もないじゃないか、と思ったりします。

 

自分がリバタリアン寄りの主張をするのは、個人の所有権をスタートとしているというよりは、公金の支出において「可能な限り多くの国民の合意」を重視しているからです。右派信仰的な皇室の維持にも、左派信仰的な少数民族文化の保護にも、大多数の国民の生活に直接的な実利をもたらさないために公金を支出して支えるべきものではないと考えています。

 

ただ、全体や予算や義務のことを考えず権利主張する人に共感できなくなったりと、ここ数年でかなり自分が保守化しているのも感じます。法学を学んだ影響でしょうか。個人より国家や全体のことを考える機会が増えました。

「国家・社会のために個人があるのではなく個人のために国家・社会がある」には共感するとともに、「権利は社会の中で義務に対応して付与されるものであり、無条件に認められるものではない」とも思っています。

 

こういったニヒリズム自然権思想の否定はナチズムにつながるものであったとして歴史的経緯から廃れたものですが、ナチズムはニヒリズム自然権思想の否定が全体主義共同体主義と結びついたものであり、ニヒリズム自然権思想の否定が自由主義と両立している限りナチズムにつながるものではないと考えています。

(「自然権思想を否定するのに自由を主張するの?」という話は長くなるので割愛します)

 

 

社会保障の必要性を感じながら、高い累進課税にも問題を感じる。

個人の自由を重んじながらも、全体のことを考えず身勝手な人への反発も人一倍強い。

私の立ち位置を図1の三次元的な空間に置くならば、政治軸、経済軸では「ここ」と同定することは難しいですが、文化的な統制に関しては限りなく弱い、図1の立方体の一番手前の面のどこか真ん中よりのところ、としか現時点では言えません。

 

 

自分語りが長くなってしまいましたが、本記事を最後まで読んでくださりありがとうございました。法学部の1・2年生が習うような政治イデオロギーの基礎的な部分について詳しく書いてみた記事です。この機会に読者の方も自分の思想を見つめ直して整理してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

これまで法学部で学んだこと Part1

これまでに単位をとった(のと今期単位を取る予定の)20科目66単位について、ひとことずつまとめます。せっかく(付け焼き刃で)勉強した知識も、すぐに忘れてしまうから。備忘録として。

 

法曹養成コースから政治コースに転類していることや長期間休学などしていたこともあり、履修がやや特殊です

 

Part1では、

法曹養成コースでとった単位→憲法民法第1部、刑法第1部、政治学、ゼミ(英米刑事法、法教育)、民基礎

政治コースでとった単位→日本政治、日本政治外交史、行政法第1部

の10科目36単位について書きます。

Part2では、

政治コースでとった単位→民法第4部、会計学、ゼミ(科学技術行政)、リサぺ、アジア政治外交史、法哲学、現代政治理論、経済学基礎、行政学、情報法

の10科目30単位について書きます。

 

↓ここからスタート

憲法(6単位) by 憲法学の鬼才

モチベ:思想好きマンなので、他の実定法よりは抽象論が多いので楽しい 定義説明をメタファーで行うのはやめてほしい この人の講義で「面白い」と勘違いして法学部に進むことを決めてしまった(激しい後悔)

内容:詩的な文章とメタファーの多用で綴られる、無軌道講義。もはや憲法学ではなく国法学である。「講義とは本来転調に転調を重ねるべきものであり…」「すぐそばに恋人がいるとしてそこで法学の眼鏡をかけるとその愛しい人の姿は見えなくてそこにあるのは法人格というのっぺらぼうな、何も魅力がない人が見える。」

芦部憲法はもはや古典になりつつあるとして批判を加えつつ自由奔放に講義を展開していた。自分の受けた年は統治機構→人権だった

学び:予備校で学んだ、判例通説の暗記、違憲審査基準や規範の機械的なあてはめ、が「学問」でもなければ「最新」でも全くないことを強く痛感した講義だった。国際比較と歴史的経緯を追う、という法学部講義の基本スタイルに慣れることができた。違憲審査基準、比例原則、公共圏あたりの議論が今でも印象に残っている。

 

民法第1部(4単位)by kmakr

モチベ:ない。必修だからやらざるを得なかった。若くして准教授になっているガチプロの雰囲気を知れたのはよかった(非人間的だった)(一部から与沢翼に似てると言われててウケた)

内容:総則・物権の予定が総則しか扱えていなかった(物権は最後駆け足で扱い、試験範囲から外された)。錯誤、虚偽表示、心裡留保、代理など各トピックについて毎回民法起草時点からの学説史の講義が展開されるので、レジュメは明治時代のカナ混じりの擬古文のようなもので埋め尽くされていて可読性が低い。我妻栄、梅謙次郎、富井政章、星野英一川島武宣、末弘厳太郎あたりの名前を耳にタコができるほど聞くことになる。

学び:講義に出ず予備校テキストと直前の学説史詰め込みだけで単位をとったので何も学べていない。

 

○刑法第1部(4単位) by sekせんせ

モチベ:刑法は刑事ドラマのような身近さ、少々突飛な判例などが面白くて好きだった(が、講義は半分ほど出ていなかった)。自分の関心が法解釈学よりは思想哲学・抽象論の方に寄っているので、履修中ずっと結果無価値と行為無価値(哲学で言う帰結主義と義務論)どちらをとるべきなのか考えていた気がする。

内容:広く浅く初学者に優しい標準的な講義だった。かなり頻繁に判例集を参照していたので判例の勉強が少し大変だった。

学び:標準的な講義で予備校テキスト中心に単位をとったので何も学べていない。私の高校の先輩に偉大な刑法学者が数人いるらしい(身バレにつながるので名前は挙げないが)というのが講義とは関係ないが印象に残っている。
sekせんせの講義とは関係ないが、hgcせんせから学んでいる学年は特に過失犯についてかなりラディカルな独自説を学んでいたらしいので聞いてみたかった。

 

政治学(4単位) by ktuせんせ

モチベ:当時は法曹を志望していて政治学を真面目にやる気がなかった(ことを政治コースにいる今では後悔している)。

内容:今見返すと、ゲーム理論、権力論、政党、選挙制度、投票行動、議会、官僚制、福祉国家実証主義などなど網羅的かつ必要十分な内容が扱われていた。

学び:当時20歳で頭が足らず価値をわかっていなかった講義筆頭。ここを真面目にやっていればのちの日本政治や行政学などの理解が深まっていたはずだった。自分の関心の「人間の自由意志」あたりと絡む話なのでルークスの三次元的権力観の話だけは印象に残って覚えている。試験の形式上トピックを選択できたので、前半だけ一夜漬けして単位をとった気がする。時間がある時この講義は学び直したい。

 

○ゼミ(英米刑事法、法教育)(各2単位)

詳しく書いて万が一教員の目に止まると身バレにつながるので詳しくは書きません。ゼミは備忘録に残さずともある程度自分の中に記憶として残っていますし。

英米刑事法ゼミでは英語で法学をやることの難しさを学び、法教育ゼミではロー生や高校生との交流が楽しかったです。

 

○民基礎(2単位)

弁護士の実務家教員から習うこと、法学部図書館で抜粋でない全文の判例を借りて読んだことなどが新鮮だった。ロースクールで行われているいわゆる「ソクラテスメソッド」がとられていた。ソクラテスは絶対に事前に当てる回を教えてくれたりはしない。内容は総則・物権の事例問題なので復習だった。Law Practiceを持っていると便利。

 

○日本政治(4単位) by skiyせんせ

モチベ:かなり面白かった。現代日本の政治に関心がある人は全員受けるべき講義であったように思う。政治のドロドロした部分について結構ぶっちゃけた話をしてくれたのが興味深かった。せんせのご専門の有権者の投票行動の部分も興味深かった。

内容:戦後の日本政治史を自民党55年体制を中心に扱っていた。第一部で安保闘争までの保革イデオロギー対立の時代、第二部で80年代までの55年体制における利益配分をめぐる対立の時代、第三部で90年代以降の制度改革をめぐる対立の時代、として記述がされた。政治史以外にも政党システム論や有権者の投票行動の実証分析も扱われた。

学び:なぜ日本で一党優位体制が安定しているのか。その歴史的経緯がわかり現代日本の政治の現在に至るまでの流れがわかったように思う。「立憲主義的な考えの日本人より非立憲主義的な考えの日本人の方が多い」というskiyせんせの研究結果は立憲主義を自明のものと考えていた身としては衝撃的で印象に残っている。skiyせんせの著書も積読しているので近々読まなければと思っている。

 

○日本政治外交史(4単位) by iokbせんせ

モチベ:なかった。日本史に興味なくて高校で日本史を履修していなかったのにひたすら日本史の講義だったから。試験前勉強してみると、中学で学んだ日本史や高校で学んだ世界史に違った角度から光を当てていて興味深くはあった。高校で日本史をやっていない人には暗記量が多すぎて履修をおすすめしにくい。

内容:鎖国と開国の時代から大戦に至るまでの日本と周辺諸国(中国、朝鮮、ロシアなど)の関係を踏まえた日本政治史

学び:他の試験でバタバタし勉強時間がとれずあまり勉強できなかった。放送大学のiokbせんせが書いているテキストにコンパクトにまとまっている。講義で「なるほど〜」と思った内容が調べてみると高校日本史の教科書に載っている内容だったりして日本史の勉強の必要性を感じた。

 

行政法第1部(4単位) by ttmせんせ

モチベ:あまりなかった。公務員試験でやるからと最初は意気込んでいたが、講学上の概念が多く登場したりして、実務に直結する部分は少ないなと感じモチベが途中からダダ下がりした。実定法アレルギーで政治コースに行ったのになぜとった。

内容:おおかた標準的な行政法総論・組織法・作用法の講義であったように思う。そのまま売れるような200ページに及ぶ丁寧なレジュメがあり非常に親切だった。試験が一つの判例一点特化だったのは不満だが。

学び:40ページ3万字程度のまとめを作って勉強したのにあまり身になっていない。標準的な講義ではあったものの、資格試験テキストとは異なる説明がされている箇所やttmせんせ独自の分類を行っている箇所がままあり、その部分がやや苦労した。行政法判例は、行政主体も「よかれ」と思ってやっているのに訴訟になっている案件が多いのが個人的には面白いと思った。

ブラック霞が関就活体験記(9〜12月)

お久しぶりです、ぴたぱんです

 

今年(2022年)の9月ごろから(遅ればせながら)官庁就活というものをやっているので、就活生の目線から、省庁、省庁のお仕事、職員さんたち、弊大学の志望者たちについて現段階の思いを書き留めておきます。(総合職についての記事です。)

先日、国総教養区分に合格をいただきました。もし来年内定をいただけたら、後輩の方々への情報提供として教養区分についての記事も書きたいと思います。

 

 

行政官の魅力とはなんなのか

kasumigasekipeople.hatenablog.com

note.com

 国家総合職の人気低下が叫ばれて久しいですが、これだけ「ブラック霞が関」と言われてもなぜ志望者がいるのか、なぜ内定者や若手職員はこの職場を選んだのか、春頃の自分には全く理解できていませんでした。しかし、ここ数ヶ月官庁就活をしてみて、彼らが「ブラック霞が関」を選ぶ理由がおぼろげながら浮かんできました。

「おぼろげながら浮かんできたんです」出典:朝日新聞

以下、私が思う霞が関での仕事のいい点と悪い点です

○いい点

・行政官として民間企業では携われない国家規模国際規模の仕事に携わることができる

・政治家と違って人気取りの必要もなければ失策の責任を取る必要もない

・近年は残業代も出るようになり、30代後半で900万、40代で1000万超と世間一般の水準からすると申し分ない給与をもらえる(らしい)

・同僚や上司の能力がある程度高く、地方自治体等や現場重視の公共分野に比べれば比較的「理屈が通りやすい」職場である(?)

・総合職の一部(財務や外務はほとんど)が6〜8年目あたりで国費で留学に行き修士号をとることができる

・「ファーストキャリアが官僚」は比較的転職市場でも有利(?)

・法改正に携わったり、国会業務に携わることで報道されるような政治行政のプレイヤーになることができる

・利他精神が強く社会貢献がやりがいになる人にとっては比較的やりがいを感じやすい職場である

・東大卒の人間にとっては自分と同属性の人間の割合が日系大手企業よりは多い職場である

・政治行政に関心の強い人間にとっては、同じような関心をもつ人が多い職場である

・社会的信用や人にイキれる肩書きがつく

 

○悪い点

・国家総合職になる人たちの能力と肩書きからすると、もっといい待遇の民間企業が多くある(給与・労働時間面)

・激務を縫って自己研鑽に励まないと、転職したときに活かせるハードスキルが身につかない

・激務で心身に不調をきたしたり、家庭関係を悪化させたり、子作りや子育てをする余裕がなかったりする人がいる(らしい)

・「政治主導」「官邸主導」が進展していて、昔ほど政治行政に対して行政官の関われる余地が大きくない

・深夜の国会待機や紙ベースでの働き方など、非常に非効率的で苦痛な業務を強いられる

・省庁によっては全国転勤がある

・終身雇用ではない(管理職になれない出世コースから外れた人は中央本省から他所へ出る慣習があるらしい)(転職の時代なので、人によってはこれは悪い点にならないかもしれない)

 

上記はあくまで私見で、他にもいい点悪い点個々人で異なるとは思います。

職員さんには「国民の意識に先立って制度を変えることで、国民の意識を変えていけるのが行政官の魅力」とおっしゃっている方もいました(私個人は反民主主義的な発言だなと思ったので賛同しかねますが)。

国会議員や地方の首長になりたいから、その足がかりとしてファーストキャリアに中央省庁職員を選ぶという人もいます。

 

「国家公務員は激務薄給」と言うと多くの国民の方々から批判を受けます。日本人の平均年収は400〜500万台であり、そこから比べるとはるかに高給取りです。労働環境も、中小企業や町工場ではもっと悲惨な働き方をしている方々も多くいます。

 一方、国家総合職のボリューム層である東大京早慶一工あたりの卒業生の多くは、国家総合職よりまともな労働環境で同じくらいの年収か、外銀外コンなどに勤めている方だと同じくらいの激務で1500〜2000万を優に超えるような職に就く方も多くいます。

 近年は国家総合職も残業代がきちんとつくようになったらしいのでこの水準ですが、ひと昔前は残業代がほんの一部しかついておらず、「大学の同窓会をすると給与では最底辺」と言っている方もいました。残業代がしっかりつく状況は今後も続くのでしょうか。ここ数年の取り組みで終わるのでしょうか。

 

総括して言うと、給与や待遇だけで言うと、より良い選択肢はあるといえます。民間企業と最後まで迷う方も多くいます。自分もその1人です。

しかし職務内容でいうと、他の民間企業では携われない仕事に携われることは政治行政に関心の強い人にとっては他の職場にはない魅力なのではないでしょうか。

 

 説明会に参加する中で(もちろん説明会に登壇する課長補佐、企画官、課長級の方々は就活生の憧れるような出世コースのキラキラエリートなわけですが)、「総理と仕事しました」「大臣と仕事しました」「国際会議に日本の代表として出席しました」なんて聞くとちょろい私は「すっげええええええええええ」と目をキラキラさせてしまいます。

 一方で、メディアやtwitterに溢れる「ブラック霞が関の実態」を日々目にしていると「こんなワークライフバランスのぶっ壊れた職場に突っ込んで大丈夫なのか…?」と不安になります。

 どちらも強くバイアスのかかっている情報なので、今から来年の夏にかけての民間就活と比較しながら自分の中で答えを出していきたいと思います。

 

(補論)官僚?役人?行政官?国家公務員?

 この記事では、「中央省庁で働く国家公務員総合職」を指して「官僚」と言ってみたり「行政官」と言ってみたりしています。現職の方だと「役人」と呼称する方も多いです。

辞書的な定義からすると、

「官僚」:広義には行政に携わる公務員の総称。狭義にはそのうち上級のものを指す。日本のメディア等では一般に国家総合職試験(かつての国Ⅰ)で任官した幹部候補生である「キャリア」を指すことが多い。批判的な文脈で使われることも多い語である。「高級官僚」などというと中央省庁の幹部級を指す。

 

「役人」:国や地方公共団体の公務員のうち、行政に携わるもの。教員や自衛官、警察官などの公務員は一般に含まない。

 

「行政官」:広義には、国や地方公共団体の公務員のうち、行政に携わる者を指す。狭義には、そのうち中央省庁で働く国家公務員を指す。

 

「国家公務員」:国家から給与を受け取る公務員。中央省庁で行政に携わる職員のみならず、国会や裁判所の職員、自衛官独立行政法人のうちの一部の職員などその職場は多岐にわたる。

 

 個人的には、「行政官」を好んで使っています。「役人」は地方公務員も含む概念だし、「国家公務員」は行政職以外も含む概念だし、「官僚」は批判的に使われることの多い語でもあるので。

 本ブログ内で表記揺れがあったら、大体同じものを指していると思ってください。

 

省庁ごとのカラー

↑のツイートのツリーに各省庁の出身大学(この方の個人調査)が書かれています。

東大が多いのが金融庁警察庁、経産、外務、財務、総務(自治)

東大が少ないのが法務、環境、厚労、総務(テレコム)

これは10年ほど前の調査ですが、就活をしている体感現在もさほど変わっていないと思われます。

↑の方の主観ですが参考までに。人事院については皮肉なので文面そのまま受け取らないように笑

 

自分が説明会やワークショップに参加したのは一部の省庁ですが、あくまで私の主観で、その一部省庁の職員さんと志望者(弊大学の方々)の印象を綴っていきます。

 

財務本省→きちっとしていて真面目な方が多い。志望者には「権力強いとこがいい」とか冗談めかしてなのか言っているやつもいます。省庁横断的に把握する力、財務や税、金融を扱う専門的な力が求められるので省庁の中でも優秀な方が多い印象です。

財務税関→一度説明会に参加しただけですが、気さくで話しやすい職員さんが多いなと感じました。

外務→あまり参加していないのでわかりませんが、国際系の仕事を志望する人には流行に敏感なキラキラ系が多いという偏見があります笑 国際法や国際政治に学術的関心があって目指すという志望者の方もいました。語学力が求められるので英語に自信ニキネキが多いでしょうか。

経産→私の苦手なタイプの人(陽キャ)が多いです笑 本当に賢くて優秀でコミュ力のある方と、コミュ力だけで薄っぺらい方といるなあという印象です。内定者主催の就活イベントで内定者と職員で内輪の話で大声で盛り上がり始めてびっくりしました。仕事に熱意と誇りと信仰を持っている若手が多い印象です。優秀な方は本当に優秀です。企業風土と人が一番民間企業に近いのではないでしょうか。

自治→志望者に男性の割合がかなり多いですが、内定者をみると女性が普通にいます(アファーマティブアクションなのか…?) 弊大学の内定者は、「総務省といえば自治のこと」のような意識を持っている方が一部いました。職員さんは議論やおしゃべりが好きな方が多いです。よくしゃべる真面目な方が多い印象。噂によるとかなり上意下達の体育会系らしい。

テレコム→他省庁と比べるとワークショップなどが盛り上がらないが志望者におとなしい人が多い…?職員さんは民間企業っぽい人から技術者っぽい人までさまざま。他所に落ちて来ましたみたいな若手職員がちらほら。

行管→アカデミックな学者気質な雰囲気の方が多い。行政評価に関心があって入っている人と働き方改革に関心があって入っている人では若干雰囲気が異なる。おとなしめな真面目な方が多く、一部ちょっと変な職員さんもいる。

内閣府→所掌が広いこともあり、経済分析に興味があってきている人と、男女共同参画に興味があってきている人では若干雰囲気が異なる。説明会はまだあまり参加していないが、職員さんは風通しのいい自由そうな方から真面目で堅物そうな人まで様々。

金融庁→経済学部出身など、金融に関心の強い人が志望者に多い。日銀と併願している人も。経産や日銀などに比較すると真面目な人が多い印象。

厚労→労働・医薬・福祉と国民の生活に密着している分野だからか、様々な大学から志望者が多く、オンライン説明会はよく参加者100人を超えている。ケアの仕事に携わる職なので、真面目で利他精神の強い人が多い。女性が多い。内定者や若手職員が集まるとやや女子会になったりもしている。ブラックで有名なことを分かって入って来ているので覚悟がキマっている人が多い。

文科→教育学部出身の方が多い。説明会で熱意と従順さを示さないと官庁訪問でほぼ通らない採用をしているからか、第一志望の人は非常に熱心に説明会に参加し熱心に質問している。職員さんは教育系の人らしく面倒見が良く話しやすい人が多い。経産や財務に比べてビジネス意識が低いというか、格好や態度がかっちりしていないゆるっとした人が職員にも志望者にもやや多い。

法務→おっとりした方が多い。

デジ庁→超異色。3〜4割が民間企業からきていて、社風もベンチャー気質。紙は使わないし上の役職の人も役職ではなく「〜さん」で呼ぶ。メールじゃなくてslack。意識高い系。

その他、防衛、警察、国交、環境などなどは一度も説明会の類に参加したことがないので私ではわかりません。

 

転職と将来の見通し

 以下のページに概要のpdfがある、「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート」(令和4年度)の結果がおもしろいので下記リンクから見てみてください。

https://www.jinji.go.jp/kisya/2209/anketo2022.html

 以下、上記ページの「調査結果の概要」からの抜粋です。

出典:人事院

 4割の人が局長級以上になりたいと思っていて、2割の人が事務次官になりたいと思って入っているという結果に驚きました。野心溢れるというか、夢はでっかくというか、自己評価が高い人が多いというか…局長というと大企業の取締役レベルらしいですが。

 あくまでファーストキャリアに過ぎず、早めに転職したいという人も2割いるようです。

 私はそのどちらでもない残りの4割でしょうか…窓際おじさんになっても良いので長く居座りたいです。就職活動も転職活動も労働より嫌いなので。

 いつかは地元で教育などの形で地元に貢献できればなという思いもぼんやりありますが、ぼんやりでしかありません。

 転職前提ではないですが、いつ転職してもいいように転職に役立つハードスキルは何らかの形で身につけていきたいなと思っています。(まだ内定も出てないのに先の皮算用をするな)

    全員が全員行けるわけではないのは分かっていますし、大学の成績が悲惨な自分が行けるかは不明ですが、可能なら留学にも行きたいなと思っています。

 知り合いの職員には、大学教員になりたいという人もいれば、コンサルに行って高給取りになりたいという人もいて様々です。内定者も、転職前提の人もいればそうでない人もいます。

 

 春頃にはそんなに志望度の高くなかった国総ですが、教養区分で合格をもらってみると一番内定に近いのは国総であり、官庁就活の中で志望度も高まって来ました。今では第一志望といっていいのかもしれません。

 上につらつら書いたような皮算用を妄想で終わらせないために、来年夏の官庁訪問に向けて引き続きサバイバルしていく所存です。