ぴたぱんの備忘録

物語と人が好き。本とか映画とかドラマとかゲーム実況とか漫画とかアニメとか。触れた直後の想いを残しときます。

Sexual objectification表象のアウトなラインがわからない

ラノベとか漫画アニメでの女性表象問題について。

一昨日の小宮准教授の記事(貼っている記事で上から二番目のもの)が燃えてるので。

私が考える材料にしている記事をいくつか貼り付けますがこの辺の議論に慣れてる人は無視していいです

websekai.iwanami.co.jp

gendai.ismedia.jp

gendai.ismedia.jp

www.anlyznews.com

note.com

 

 

 

私としては自分でも反対なのか賛成なのかなんとも言えない立場ですし、いろんな立場の人がいますよね。

パッと見た感じ、論点としては、

表現の自由の侵害に当たるか、規制して良い合理性があるか」

ゾーニングを徹底しろ(嫌なら見なければいい、不快な人の目につかなければいい)」

「これらの絵で女性キャラを性的モノ化しているのは女性への侮辱にあたるor女性への性的客体としての眼差しの風潮を助長する」 vs  「単に一個人のキャラを描いているだけで女性一般を指しているわけではない」「二次元と三次元を混同しすぎ(二次元での表現が三次元での行動に影響を及ぼすことはないor二次元での表現が現実での侮辱にあたることはない」

小宮「これらの女性に対する意味付けを含む表象は女性にとって累積的な問題として経験される」「理由のある露出、主体的な表現としての露出なら構わない」vs 批判「記事の理由のある露出(水着)も海外では批判され得る」「女王様もの、お姉さんモノなど、主体的能動的な女性を描いたコンテンツならいいのか」

「女性作者による女性の性的露出の多い絵もたくさんある」「主体的能動的に性的モノ化される女性を非難するのか」

などなど…

 

まとめるだけで疲れる。

 

論点ごとで、こっちは賛成できるけどこっちは賛成できない、みたいなそれぞれ立場があって、一概に「擁護派」「規制派」とか言えないと思うんですよね。

アウトだと言う合意が形成される(そんなんコンセンサスなんかないけど)ラインはどこなのか思考実験してみたいと思います。

もちろん、発言力の大きさが人によること、ネットで拡散されることにより「アウト」のラインが変わる可能性などありますが、そこはご容赦ください。社会調査したらどうなるか独断と偏見で書いただけです。

 

事例1:

ある男性が、ある女性に向かって、「お前のことは穴/オナホとしてみてる」「お前は俺の性奴隷/肉便器」などといった発言をする

(過激な設例で申し訳ありません)

これは、「三次元」で「男性が」「女性を性的客体視」していて「女性を人格を認めない性的消費対象」にしていて、それを女性に向かって「直接表明している」例です。

アンケートとったわけではないですけど、8割くらいの人は「アウト」だとするのではないでしょうか。

 

事例2:

事例1のような発言を主人公がしている成人男性向け漫画がある。絵は性的に強調されているわけではない。その主人公の発言は作中で特に制裁を受けることもない。ちなみにこの作品はポスターにして公の空間に掲示されたり、書店で目に見える位置に平積みにされているわけではない。作者は男女不明。

事例1を二次元に条件だけ変えました。ゾーニングは徹底している状態です。一般向け漫画なら老若男女手に取る可能性がありますが、成人男性が多く手に取るとします。

正直こんな表現多くあります。成人向け漫画では穏やかな方でしょう。強姦・陵辱モノなどありふれていますから。

不快に思う方は女性を中心に4割くらいはいるかもしれません。しかし、ゾーニングが徹底していますし読む人は成人向けだという点に合意しているのでこれに規制をしろなんて声は(一部ありますが)そんなに多くは聞かれません。

セーフなのかな。

 

事例3:

事例2の漫画の当該「お前はオナホ」発言部分が肯定的な文脈でポスターとして老若男女の目に触れる場所(病院のような公共の場)に掲示されている。

これをどうやって肯定的な文脈で使うんだよって感じですが、まあこの漫画の宣伝ポスターだとでも思ってください。

これは、「二次元」で「男性が」「女性を性的客体視」していて「女性を人格を認めない性的消費対象」にしていて、それを女性に向かって「直接表明している」場面が「漫画という媒体で」「公衆の目に触れる形で」ある場合です。

仮に病院だとして、この病院は自主規制する可能性がありますが、掲示されているものとして考えて下さい。

独断と偏見でいうと、「面白そうだから買おうかな」が1割、「なんか気持ち悪いけどまあそんなポスターどこにでもいっぱいあるからどうでもいいや」が5割、「不快だなあ」が3割、病院に苦情入れるのが1割、といったところでしょうか。

まあ自主規制入れるかもしれないし、少し「アウト」だと感じる人がいることは当然に予想されはします。

 

事例1が三次元、事例2が二次元(ゾーニングされている)事例3が二次元(ゾーニンングされていない)

の例でした。ゾーニングさえある程度されていればどんな表現も大きな問題にはならないように感じるので、以下は公衆の目に触れる場合を考えていきたいと思います。

 

過激レベルを下げていくつかの条件を変えてみましょう。

事例4:

飲み会で、CちゃんやDちゃんに聞こえる大声で、男性Aと男性Bが「Cちゃんはヤれる、Dちゃんはヤれない」「Eちゃんは抱ける」などと発言している。

事例5:

飲み会で、CさんやDさんEさんはその場にいないが、他の女性に聞こえる大声で、男性Aと男性Bが「Cちゃんはヤれる、Dちゃんはヤれない」「Eちゃんは抱ける」などと発言している。

事例6:

事例5の発言を主人公が漫画内でしていて、主人公が他の登場人物から非難や制裁、陰口を受けることは特にない。対象は男性向けではあるが一般漫画。

事例7:

飲み会で、男性陣HやIに聞こえる大声で、女性Fと女性Gが「Hには抱かれたくない、Iになら抱かれたい」などと発言している。

事例8:

事例7の発言を主人公(女性)が漫画内でしていて、主人公が他の登場人物から非難や制裁、陰口を受けることは特にない。一般漫画。

条件は揃えろ、対照実験しろ!とお叱りがあるかもしれませんが、動かす条件がいくつもあると何十パターンも設例しないといけなくなるので紙面の都合でいくつかの条件を同時に変えていることをご容赦ください。

 

事例4、5は「三次元」で「男性が」「女性を性的客体視」していて「女性を人格を認めない性的消費対象」にしていて、それを女性に向かって「間接表明している」例です。事例1を過激さを抑えて間接的にしたものです。

これはいわゆる「セクハラ」とされる典型例です。20世紀ならお咎めなしだったかもしれませんが、今はアウトでしょう。男性からも止めに入る人がいることが予想されます。4のように本人が聞いていようが5のように本人が聞いていまいが咎められるでしょう。

 

事例6の評価はかなり分かれるのではないでしょうか。この漫画が人気漫画なら一部のフェミニストの方は出版社に苦情を入れるかもしれません。twitterで議論が巻き起こるかもしれませんね。

 

事例7は主体が女性の場合です。松本人志が「抱かれたくない男ランキングはセクハラ」と主張して議論を呼んでいました。「ヤレる女子大の特徴」だとセーフ:アウト=4:6くらいかもしれませんが、男女が逆転するとセーフ:アウト=6:4くらいには判断が変わるかもしれません。飲み会での直接表明でも6:4くらいでしょう。まあこの男女の非対称性は時が経てば変わるかもしれませんね。

 

事例8のようなものになればそもそも論争すら起きずスルーされるかもしれません。

 

 

これまでは「発言」を扱ってきましたが、より燃えている事例に近い、女性身体の描き方で考えてみましょう。

事例9:

胸の大きいグラビアアイドルが水着で献血の広告をしている。公共の場に掲示されている。

事例10:

胸の大きいグラビアアイドルが露出の少ない格好で献血の広告をしている。公共の場に掲示されている。

事例11:

女性作家の描く胸の大きいキャラが露出の多い格好で献血の広告をしている。公共の場に掲示されている。(高橋留美子先生の『うる星やつら』ラムのイメージ)

 

 

事例12:

宇崎ちゃん献血ポスターの事案

 

 

そもそも、「露出が多い胸や尻の大きい女性を描く」ことが「女性に対する性的客体化というメッセージ→侮辱」だと受け取る人が全人口の何割なのか知りませんが、仮に2割だとしましょう。単に胸が大きくても描き方が客体性を強調する描き方でなければいいという小宮先生のような方もいらっしゃいますし。

事例9は「三次元」で「男性が」「女性を性的客体視」していて(小宮先生の言う理由のない露出)、「女性が能動的にその構造に参入している」のが「公衆の目に触れている」場合。どうなんでしょう。検討するのが面倒になってきました。紐のような水着だったら苦情をいう人がいるかもしれませんし、少し胸元が大きく開いた服程度だったら苦情を言わないかもしれません。紐だったら性的羞恥心の惹起みたいな違う問題が発生しそう。

事例10はセーフだと言うコンセンサスが取れるんじゃないですか。一部にはグラビアアイドル使う必要ないって人もいるかもしれませんが。

 

事例11はどうでしょう。まあラムは絵柄が古いのと女性作家と言うことがあって性的レベルが現代漫画ほどではないんですが。主体的で気の強い女性として描かれているキャラクターですね。

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出典https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000085.000009251.html

私も幼い頃、うる星やつらの再放送が地上波であっていた時はえっちだと思って親がいる前では見れなかったのですが、今では何も感じないので、性的だと感じるかは個人差があるでしょう。 

まあストーリーは忘れたので理由のない露出かどうかはわかりませんが、セーフなんじゃないですか。

 

事例12です。

 本当はもっと色々な男性作家の胸が大きい女性キャラを持ってきて比較したかったのですが面倒なのでやめました。To LOVEるなら、ゆらぎ荘なら、監獄学園なら、ハイスクールD×Dなら、ワンピースなら…

 私はワンピースは大丈夫だろう、To LOVEるとかが献血ポスターしてたら苦情出るかもな、宇崎ちゃんの漫画は知らないしわからない、という線引きなのですが、どこで線引きする方が多いのでしょうか。

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スケスケスカートが問題になったやつ 出典:https://www.j-cast.com/2016/10/18280985.html?p=all

 

私個人の立場は、「特定の女性の描き方による性的客体化というメッセージの危険性」という主張の言いたいことはわかるややフェミニズム側の人間なので、「このキャラだとまずいな、苦情を言う人がいるかもな」という表現がありますが、これに賛同できない人が大多数だと思います。私の線引きが一般的だとは思っていません。私も「まずいな」と思う表現はあっても「それを規制しろ」とは主張しません。経済的な市場で、言論の自由市場(Market of ideas)で淘汰されるなら淘汰される、需要があるなら生き残るに任せるべきだと思います。

 

事例13:

成人向け漫画で、体に「肉便器」と書かれた女性が描かれているシーンの漫画の広告ポスターが公共の場(病院など)に貼ってある

事例14:

成人男性向け漫画の強姦ものの過激なシーンのバナー広告が一般サイトで出てくる

事例15:

成人女性向け漫画(BL、ティーンズラブ)の露出の多い細マッチョイケメン俺様系男性の広告ポスターのバナー広告が一般サイトで出てくる

事例16:

成人男性向け漫画(和姦もの)の、女性が主体的能動的に行動している過激なシーンの広告ポスターのバナー広告が一般サイトに出てくる

検討するのに疲れてきました。

宇崎ちゃんポスターやラノベの表紙は別にいいと思うけど、13は駄目だろうという方はいるのではないでしょうか

 

14もたまに議論の俎上に上がります。 事例2で触れたように、強姦のような過激な成人男性向け漫画であっても、ゾーニングが徹底されていれば問題になることは少ないです。しかしながら、一般サイトのバナー広告にこれらの漫画が多く出てくることも事実で、ネットユーザーであれば老若男女の目に触れます。私の女性の友人でも不快に思うという方がいました。2〜3割の人はアウトだとするのではないでしょうか。15のように成人女性向け漫画だったらいいのでしょうか。16のように女性が主体的能動的に行動している(女王様もの、オネショタものような)ものだったらいいのでしょうか。小宮理論だといいことになりそうです。

 

事例17:

成人向け雑誌・漫画がコンビニに置いてある

事例18:

一般向け漫画で棒アイスを舐めさせるなどの性的なメタファーが表紙で使われているものがコンビニに置いてある

 

事例19:

上半身裸の男性俳優が表紙を飾る女性誌がコンビニに置いてある

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参考画像 出典:https://ddnavi.com/news/470873/a/

事例20:

上半身裸の俳優が献血ポスターをしている (上の竹内涼真のイメージ)

 

 

17について。東京オリンピックに向けて「海外ではありえない」との批判からコンビニから成人誌がなくなりつつあるようです。イギリスやドイツで見たという話もちらほら聞きますが本当に海外ではありえないのでしょうか。それはともかく。成人誌は撤去されても青年誌のグラビアアイドルが表紙を飾っているようなものは撤去されないようです。コンビニの事例だと、青少年の健全な育成みたいな論点も出てきそうですね。どこまでならアウトでどこからはセーフなのでしょう。グラビアはセーフなのか。厳しめに見てグラビアがアウトだとして、事例18のような表現もダメなのか。壇蜜が「肉汁トロットロ」と発言したり亀の頭を撫でるcmが過激だとして放送中止になったことがありましたね。メタファーだとしてもアウトな場合があるようです。

事例19、20について。ananはsex特集などを多くしている女性向け雑誌で、女性向けavが付録でついていたりします。女性が男性を性的に消費しているものは、公衆の目に触れていいのでしょうか。20のように、上半身裸のイケメン芸能人が献血の広告をしていたらどうでしょう。「女性が」「男性を性的客体として見ている」「三次元の」「公衆の目に触れている」表現です。「不必要な露出」でもあります。男性と女性が逆になっただけで世間の評価は変わるのでしょうか。

 

 

この辺りで検討は終えたいと思います。本当は社会調査をしてデータの仮説検定をして…とやらなければならないところですがブログなので。読者の方でも色々な場合を想定してみてください。