ぴたぱんの備忘録

物語と人が好き。本とか映画とかドラマとかゲーム実況とか漫画とかアニメとか。触れた直後の想いを残しときます。

チンパンジーと考えるインボイス制度

僕はチンパンジー大学生なので複雑な仕組みが分からない。

2023年10月1日からインボイス制度が始まる。

インボイス制度導入で一番打撃を受けるのは零細個人事業主らしいが、これに該当するクリエイターの方々などはその芸術分野の専門学校で学んだ方も多いだろう。勉強ばかりやってきた役人の作った複雑な仕組みを理解して煩雑な事務手続きをこなすことに苦手意識の強い方がいるのではないだろうか。零細個人事業主だと税理士に丸投げする金銭的余裕もないかもしれない。

「AIいらすとや」で生成した「インボイス制度を学ぶチンパンジー

チンパンジー法学部生としてそういった「インボイス、訳分かんないよ~」という声に強く共感し、自分が理解するため、そして一人でも多くの人に伝えるためにこの記事を書き始めました。一人でも多くの人の役に立てば。

(チンパンジーなので誤った理解をしている箇所がある可能性があります。指摘もらえれば修正します。)

フワちゃんと学ぼう!インボイス制度

youtu.be

国税庁が出している「フワちゃんと学ぼう!インボイス制度」という上記動画。
youtube上にあるインボイス関連の動画の中では丁寧な方だと思った。
しかし、僕はチンパンジーなので15分も動画を見れない。

 

以下、動画中からいくつか場面をスクショして引用します。

従来の消費税納税の仕組み

消費税の仕組み

上の図を、仮に「仕入れ元=Aさん(花束加工業者)」「事業者=B社(スーパーマーケット)」として考えてみましょう。(ここでは、従来から課税事業者であった前々年度売上1000万円超の花束加工業者を想定してください。)

AさんがB社に花束を納品した際、消費税込1100円受け取ったとします。するとAさんは消費税として100円を納税することになります。

B社が消費者に花束を販売した際、消費税込3300円受け取ったとします。このとき消費税分は300円ですが、じゃあB社はこの300円を納税しなければならないのかというとそうではありません。Aさんから花束を仕入れたときに100円分消費税を払っているのですから、B社が納税するのは300-100=200で200円になります。この引き算をすることを「仕入税額控除」といいます。

キーワード:仕入税額控除
免税事業者なら…?

上記のような消費税納税の仕組みである訳ですが、前々年度の売上が1000万円以下の事業者は「免税事業者」に該当し、消費税を納税しなくていいことになります。

仮に、Cさん(零細花束加工業者、免税事業者)が先ほどのAさんの例と同様の取引をB社としたとします。この場合、Aさんが納税した100円を免税事業者Cさんは納税しなくていいことになります。もちろんCさんも農家から花を仕入れているので1100円が丸々懐に入るわけではないですが、この取引単体でみるとAさんと比較してCさんは消費税100円分出費が減ることになります。

 

なんでインボイス制度を導入することになったの?

複数税率に対応し、適正に納税してもらうため

2019年10月から、日本の消費税は10%と8%の複数税率があります。

酒類、外食を除く一般飲食料品や新聞が軽減税率の対象となり8%、その他が10%です。

このため、税額ごとに分けて計算する必要が出て、適用税率の記載が義務となるインボイス(適格請求書)を請求書として使うことになりました。

インボイスの記載事項

じゃあ、2019年10月~2023年9月はどうしていたのか?

経過措置として、「区分記載請求書」が利用されていました。ただし、この区分記載請求書の発行は義務ではなく、納税額が適正に計算されている保証はない状態でした。

出典:https://www.freee.co.jp/kb/kb-invoice/category_invoice/#content2-1

インボイス制度導入後、どう変わるの?

仕入税額控除の適用にインボイスの保存等が必要になる。

インボイスの交付は登録事業者しか行えず、免税事業者は登録事業者になれない。

③登録事業者は、買い手から求められたとき、インボイスの交付義務がある。

先ほどの花束仕入の例を用いて説明します。

買い手側であるスーパーマーケットB社は、インボイス制度導入後、仕入税額控除を受けるためにはインボイスが必要になります。

仕入税額控除をしなければ、200円ではなく300円納税しなければならなくなるので、B社は損してしまいます。そこで、B社は仕入先にインボイスの交付を求めるでしょう。

課税事業者Aさんは、登録事業者になればそのままインボイスの交付を行えます。

ところが、免税事業者Cさんは免税事業者のままだと登録事業者になることができず、インボイスの交付を行えません。

このような状況の場合、Cさんが免税事業者のままだとB社はCさんとの取引をやめてしまったり、損失を補填しようとCさんとの取引価格を安く変更しようとする可能性があります。(このような対応は、場合によっては独禁法上の優越的地位の濫用に当たり違法となる可能性があるみたいですが、僕はチンパンジーで下請法や独禁法フリーランス法に詳しくないのでわかりません)

(上記のような優越的地位の濫用とフリーランス保護に関して知りたい人は、東京大学の白石教授のオープンキャンパス講義動画をご覧ください。)

youtu.be

何が批判されてるの?

小規模個人事業主が経済的打撃を受ける懸念

先ほど書いたように、インボイス制度が始まると買い手は免税事業者と取引しないようになるかもしれません。

小規模個人事業主にとって、免税事業者のままでいれば取引相手を失うおそれがある。そうなってしまえば経済的大打撃を受けます。(再度述べますが、独禁法フリーランス法等で保護される可能性もあります。)

それを避けようと課税事業者になれば、消費税分10%を納税しなければならなくなります。
個人事業主の年間売り上げが1000万以下だと、従来免除されていた10%を納税することは経済的負担が大きいです。

つまり、小規模個人事業主にとって、免税事業者のままでいるにしろ、課税事業者になるにしろ、インボイス制度導入前より経済的打撃を受ける可能性があります。

事務作業負担の増大

これは小規模個人事業主に限らずほとんどの事業者にかかわる問題です。
・売り手(先ほどの例だと花束加工業者Aさん)にとっては、登録事業者になる事務作業負担、取引でのインボイス交付の事務負担が増えることになります。

・買い手(先ほどの例だとスーパーマーケットB社)にとっては、(仕入税額控除をしようとするなら)仕入先にインボイス交付を求め、保存し、納税額を算出し仕入税額控除を受けるという事務作業負担が増えます。

 

(e-Tax等でオンラインで簡便化できる事務手続きもあるから調べてみてね!)

 

よりよい政策手段はなかったのか?

私個人としては、政策目的「複数税率の中で適正に納税してもらう」に異論はありません。しかし、その目的を達成するための手段としてよりよい手段はなかったのか?

 

そもそも複数税率なんて始めたからこうなったのでは?増税しないで一律8%、増税して一律10%、どちらかしか選択肢はなかったのでは?過ぎたことを言っても仕方ない。

 

A「事務作業を増大させずに適正に徴税する」、決済の電子化・情報化を進めれば可能なのではないか、ネットではエストニアではそれができているとか聞くが裏は取ってない。まあただ紐づけるだけのマイナンバーごときでこれだけゴタついて揉めている日本では夢のまた夢かもしれない。

 

B「小規模個人事業主に経済的打撃を与えずに適正に徴税する」、できないのか?チンパンジーなのでいい策がパッとは思いつかないが。ここまで読んでくれた賢い読者の方は思いついていたり知っていたりするかもしれない。チンパンジー筆者まで教えてください。

 

令和5年度改正で、Aの点については「少額特例」「少額な返還インボイスの交付義務免除」、Bの点については「2割特例」での負担軽減措置がとられるという改正がなされました。詳しくは国税庁のサイトを参照されてください。

www.nta.go.jp